公園に自生したスイセンについて

ーこれは、昨年の話であるー
家の近くに、森のような自然公園がある。
小さいが、心癒される公園である。
わざわざ公園を横切って、買い物に行ったりしている。
公園の隅には小さな花壇があって、春になると、可愛らしい花が所狭しと咲いている。
この花壇をお世話するサークルがあるらしい。
タネが飛んだのか、雑木林の根元に、そっと花が咲いてたりする。
この間、スイセンの花が自生しているのを見て、優しい気持ちになった。
たまに、近くの保育園なのか、園児がお散歩に来ていることもある。
木陰もあるし、丁度いい広さだから、保育士さんも安心だね。
ここは、管理人さんがきちんと管理してくれているから、ゴミが落ちていることもなく、それも気持ち良く過ごせる理由だ。
ただ、友人から、こんな話しを聞いてしまった。
その友人がこの公園に来た時のこと。
保育園の園児たちが自由に遊んでいたそうだ。
落ち葉の上を走ったり、雪合戦のように落ち葉合戦をしたり、鬼ごっこをしたり、、、
その中で、一人の園児がスイセンの花を引っこ抜いて、チャンバラのようにお友達にぶつけたりして遊んだあと、その場に捨てて行ってしまったとか。
その後、園児たちは先生と一緒に、保育園へ帰って行ったそうだ。
友人がベンチでその様子を眺めていると、管理人さんが近づいてきて、
「子どもは好きよ。
でも園児が帰った後は、いつもこうなっちゃうの」
管理人の高齢の女性は、散らかった落ち葉を掃きながら、友人に話しかけたそうだ。
「注意しないんですか?」
と聞くと、
「以前、ここで働いていた人が、やんわり保育士さんに注意してほしいと話したら、その場では謝ってくれたんだけれど、その後、保育園から区役所にクレームがあったんですって」
その方は区役所の方から注意を受け、結局、お仕事を辞めてしまったんだとか。
(ここのお仕事は、区役所管轄のシルバー人材サービスということだ)
その管理人女性はその話を聞いていたので、どんなことがあっても、注意しないそうだ。
友人は、管理人さんの立場で、私に話をした。
私はこの話を聞いて、考えさせられてしまった。
私もこの公園で何人かの管理人さんを見かけたことがある。
どなたがこの話をしたかは分からないが、皆さん70過ぎと思われるご高齢だ。
大事なお仕事なんだと思う。
いつもきちんと仕事をされていた。
それとは別に、、、
園児が落ち葉とか、木の枝とか、自然のものを使って遊べる場所は、近場にはほとんない。
園児にとって、この公園は、思いっきり走れる数少ない場所に違いない。
私が小さな頃は、近所のあちこちに「空き地」があって、虫とりとかしていた。
葉っぱや花の実を取って、おままごとに使ったりもした。
誰からもしかられなかった。
今、巷では大谷翔平くんが大人気だ。
子どもたちも、
「大谷くんみたいになりたい」と言う。
この子たちはどこで野球の練習をしているのだろう。
今、公園ではボール遊び禁止である。
スイセンの花を抜いてしまった子。
これが、
「お母さんはお花が好きだから、お母さんに持って帰る」
と言う理由なら、許されるのか。
自生したスイセンなら抜くのを許されて、近所の人がお世話している花壇に咲いた花なら、保育士さんは注意したのか、、、
大人になるにつれ、私は物事をどう判断して良いのか、分からなくなることが増えた。
ただ、雑木林に咲いていたスイセンの花は、茶色の風景の中で、凛と美しく、無残に抜かれてしまったと思うと、とても悲しかった。
引き抜かれて、ほっておかれたスイセンは、その後どうなったのだろう。
私は、それがひどく気になった。
はるか昔、ピアノのお稽古に先生のお宅に伺うと、小さな花瓶に可愛らしいピンク色のスイートピーが
2輪ほど生けてあった。
「可愛いですね」
と言うと先生は、
「これね、きのう来た生徒が持ってきたの」
「面白い子でね、道に落ちてたからって」
「ダメかと思ったけれど、元気になったわね」
ピアノの先生は嬉しそうにスイートピーを眺めたあと、静かに楽譜をひらいた。