思いのままに

日々徒然

愛は勝つ

le miel



シンガーソングライターのKANさんの訃報のニュースで、久しぶりに「愛は勝つ」の曲を聞いた。


1990年にリリースされたこの曲はヒットしたから、その頃どこかしこで耳にした。


歌謡曲というのは、その時代の空気感や思い出をそのまま封印するから、久しぶりに聞くとその頃の自分に一気に引き戻される。


あの頃、私は恋をしていた。


二人の未来を密かに夢見て、ストレートな歌詞を聞くたびに、「最後に愛は勝つ」んだと、勝手に励まされていた。


曲が、その頃の日常に私をどんどん引気戻していく。

いろいろなことが芋づる式に思い出されてきて、言葉にしないではいられなくなってきた。




その頃、日本はまだまだ元気で、20代だった若い私は大いに青春を謳歌していた。


同じ職場に配属された同期に、仲良しのCちゃんがいた。

彼女はしっかり者で、どこかフワフワしていた私にとって、お姉さん的存在だった。


初めてボーナスが出て浮かれいると、

「記念に大きな買い物をしようよ」

と誘われ、二人でゴールドのネックレスを買った。


紺色の制服にコールドのネックレスはよく似合った。


「でも、あとはちゃんと貯金しよう」

「世の中には、私たちより少ないボーナスで妻子を養っている人もいるんだよ」

「将来私たちが結婚した後、いろいろな事態に備えて自分の口座を持っておくんだよ」


結婚したら専業主婦になるのが通例で、「寿退社」という言葉が存在した時代であった。

Cちゃんは少し先の未来にきちんと備えていた。


私はCちゃんの言葉を胸に刻んだ。


その頃Cちゃんは、皆が憧れる外資系の銀行に務める背の高いイケメン男性とお付き合いしていた。


私とCちゃんはいつも一緒にいるから、

街中で彼とCちゃんが歩いているのを見かけた人から、私と勘違いして噂されることもあった。


「先週、渋谷でデートしたでしょ。

また私と間違えられたよ〜」

と言うと、

「ごめん、ごめん」と笑っていた。



暫くたった頃、

「で、結婚するの?」

私とCちゃんの仲なので、ダイレクトに聞いてみた。


するとCちゃんは、

「そりゃ〜結婚したいわよ」

「でもね、それとなく彼に結婚観を聞いてみたら、

"今は結婚は考えられない。

3、4年後に結婚を考えた時に、隣にいてくれた人と結婚する"って言ってた」


「・・・」


「彼とは同じ年だし、男性と女性とは結婚のタイミングは同じじゃない」

「私はね、4年も待てないよ。

待って結婚出来る保証はないし。素敵な人だけど」


程なくしてCちゃんは彼と別れた。



その後Cちゃんはお見合いをしてトントン拍子に結婚が決まり、沢山の花束に囲まれながら会社を辞めた。


会社を辞めるまでの間もCちゃんらしく、

「会社にいる間に歯を治した方がお得だから」と、せっせと歯医者に通っていたし、

結婚祝いとして、お祝金の他に何か形に残るお品を贈りたいと申し出ると、

「では、台所用のボール(お野菜を洗ったりする器)が欲しい」と言った。

ペアの食器とかを想定していた私は、想定外の品にキョトンとしていると、

「案外、ボールって高いのよ。

新生活では細々したものにお金がかかるから、ボールを買ってもらえると助かる」との事だった。


最後の最後まで、しっかり者のCちゃんだ。


ちなみに、

Cちゃんの結婚式で初めてお会いしたご主人は、白馬に乗った王子様タイプではなかったけれど(ごめんさない)、話で聞くより器の大きそうな方で、人柄の良さが友人のスピーチからも伝わってきた。


Cちゃんの言葉は1つ1つ私の心に刻まれ、浮き足だっていた私を、少しずつ地面に根付かせる重石となった。



私はと言うと、

結局、好きだった人とは上手くいかなかった。



心配ないからね きみの想いが

誰かにとどく明日がきっとある

どんなに困難でくじけそうでも

信じることを決してやめないで・・・


信じることさ かならず最後に愛は勝つ



細く繋がっていた私たち仲良し同期4人組は、数十年の時を経て、ようやく自由に集まれるようになった。


久しぶりに会ったCちゃんは、昔の雰囲気変わらず、でも、とても素敵な大人の女性になっていた。


最初に思い描いた相手ではなかったけれど、

私たちの想いは、ちゃんと届く相手にしっかり届いたたね。


やっぱ、最後に愛は勝つんだね。

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